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59.遺産が未分割の場合の相続人の確定申告

未分割の遺産に対する相続税の計算

故人に遺言がない場合、相続人間で遺産分割協議が行われます。

その話し合いがうまくいかず、相続税の申告・納税期限である10ヶ月以内に遺産の全部を分割できなかった場合でも、税務署は相続税の納税は待ってくれません。

未分割の遺産については、各相続人が民法の規定による相続分の割合に従って、その遺産を取得したものとみなして相続税額を計算します。

民法の規定による相続分とは法定相続分や代襲相続分をいいます。

適用できなくなってしまう規定

未分割遺産がある場合の相続税の申告は、期限内にすべての遺産が分割され、申告・納税した場合に比べて主に以下のようなデメリットがあります。

(1)配偶者の税額軽減が適用されない

この税額軽減の規定により、配偶者は法定相続分(遺産の半分等)か1億6000万円のどちらか大きい額までの遺産に対しては相続税がかかりません。

遺産の一部が未分割の場合は、その分割されていない遺産部分については適用されません。

(2)小規模宅地等の特例が適用されない

この特例の規定により、遺産のうち居住用や事業用の宅地等については各一定の面積(居住用は330㎡、故人の事業が不動産貸付業の場合は200㎡、不動産貸付業以外でかつ特定事業用宅地等に該当する場合は400㎡(居住用と特定事業用は完全併用可能))について評価額が通常の半分~20%となります。

ただし、分割されていない宅地等については適用されません。

(3)物納ができない

未分割の遺産は、相続人全員の共有財産とみなされ、物納財産としては不適当とされるため、原則として物納が許可されません。

ただし、その共有者全員が持ち分の全部を物納する場合は、物納の申請をすることができます。

(4)相続税の納税猶予が適用されない

農地等、非上場株式等などについて納税猶予の適用を受けるためには、その納税猶予の対象となる農地等が申告期限までに分割されている必要があります。

未分割遺産を分割した場合

とりあえず未分割遺産がある状態で期限内申告書を提出するとき、「申告期限後3年以内の分割見込書」を一緒に提出しましょう。

この分割見込書を提出することにより、未分割であった遺産が相続税の申告期限から3年以内に分割された場合、その分割された日から4ヶ月以内に更正の請求を行なうことにより上記(1)(2)の優遇措置については適用することができるようになります。

そして、過去の納税額が過大であった場合には、その多い部分について還付を受けることができます。

この場合についても申告期限から3年以内、という期限がありますので十分な注意が必要です。

分割された申告書等を提出

未分割遺産が分割されたことにより相続税が変わったときは、新たに下記のような申告書等を提出しなくてはならない場合があります

(1)遺産が分割されたことにより新たに申告書を提出する必要が出てきた場合⇒期限後申告書

(2)遺産が分割されたことによりすでに確定し、申告を行っていた相続税額に不足が生じた場合⇒修正申告書

(3)遺産が分割されたことによりすでに確定し、申告を行っていた相続税額が過大となった場合⇒更正の請求

所得税への影響

相続によって取得した遺産を、申告書の提出期限から3年以内に譲渡した場合、所得税を算出する際の課税所得の計算上、一定額をその譲渡した遺産の取得費に加算することができるという規定があります。

取得費に加算することができるということは、取得費は譲渡金額から控除することができるのものなので、それだけ課税所得が少なくなり、所得税の節税になります。

この規定も3年以内に分割が決まらないと適用されません。

たとえ申告期限までに遺産の全部が分割されなかったとしても、3年以内に分割してしまわないと、相続税だけではなく所得税についても損をすることとなります。

取得費に加算される相続税額の計算方法についておおまかに説明をすると、相続した土地、建物、株式などの財産を譲渡した場合、その譲渡した相続財産に対応する相続税額分が取得費に加算されます。

なお、この規定の適用を受ける場合、その財産を譲渡した年分の所得税の確定申告書に「相続財産の取得費に加算される相続税の計算明細書」等の書類を添付しなければなりません。